看護大学で教鞭を執る傍ら、訪問看護・介護事業を立ち上げ、多忙な日々を送るリスナさん。インタビューでは、EPAの介護福祉士候補者としての経験が、現在の活動にどのように繋がっているのかを、語っていただきました。
EPA第1期生としての挑戦
Q. EPA第1期生として日本で介護を学ばれたそうですね。来日当時のことを教えてください。
第1期生は、日本に行く前の事前日本語研修がなかったんです。そのため、日本語はわからないまま日本へ行きました。初めての研修地は大阪にある日本語研修センターでした。研修は6ヶ月間行われ、そこで初めて日本語を学びました。
Q. 日本語がほとんどわからない状態での生活は大変だったのではないですか?
大変でしたね。最初に困ったのは、食べ物のことでした。私はイスラム教徒なので、豚肉は食べられません。でも「豚肉」という漢字がわからず、ラーメンを買って食べてしまったことがありました。数日後、先生に「この漢字は豚肉のことですよ」と教えてもらって、初めて知りました。それからは注意するようになりましたが、漢字で一番最初に覚えたのは「豚肉」ですね。幸い、研修センターにはインドネシア語が話せる先生が3人いらっしゃったので、困った時に相談できてとても助かりました。
Q. 研修後、神奈川県の特別養護老人ホームで介護の仕事を始められたそうですね。
はい。ホームでは、インドネシア人職員は私一人でしたが、皆さんがとても優しく親切にしてくれました。最初は重度の認知症がある利用者さんのフロアで勤務しました。言葉でのコミュニケーションが難しくても、技術や姿勢で思いを伝える介護を学ぶことができたのは貴重な経験です。また、胃ろうの管理など、インドネシアでは経験したことのなかった医療的ケアにも携わることができ、多くのことを学びました。
Q. ご自身から積極的に学ぼうとする姿勢が伝わってきます。
ありがとうございます。日本語をもっと上達させたかったので、理事長に「日本語の先生がほしいです」とお願いしたところ、市役所でボランティアの先生を探してくださり、週に2回ほど施設に来て教えていただきました。理事長は、私が一人で日本にいることを心配してくださり、ホームシックにならないようにと、様々な面で気にかけてくださいました。ある休日には、車で遠方の友人の家まで送ってくださったんです。その友人が、今の夫なんです。理事長夫妻には、心から感謝しています。
帰国後の活躍
Q. 日本での経験は、帰国後のキャリアにどう影響しましたか?
はい、今は看護大学の先生として教える傍ら、訪問看護と訪問介護の会社を共同で立ち上げました。日本で学んだ介護の技術を、インドネシアでも広めたいという思いが強かったんです。
Q. まさに「スーパーウーマン」ですね。
そんなことはありません(笑)。訪問介護事業では、日本の知識を活かして、アセスメントや記録を重視しています。また、介護士の育成にも力を入れており、介護カリキュラムを自ら作成しました。さらに、デイサービスのような利用者さんのためのクラブも運営しており、朝から夕方まで皆さんが楽しく過ごせる場所を提供しています。日本の介護は単なるお世話ではなく、利用者さんの残存機能を活かすことがとても重要だと学んだので、そうした考え方をインドネシアでも広めていきたいです。
ちなみに、夫もEPAの同期で、日本で働いた後、帰国してホンダで働いています。日本語の読み書きもできるので、日本の会社では重宝されるようです。日本の会社で働くという、看護とは全く異なるキャリアを選んだのも、EPAでの経験が彼に多様な選択肢を与えてくれたからだと思います。
家族との歩み、そして未来へ
Q. お仕事だけでなく、ご家庭と子育てを両立するのは大変なことかと思います。
そうですね。実は、息子が幼い頃に言葉の発達の遅れを指摘され、2年ほどセラピーに通わせていました。仕事と子育てを両立するのは大変でしたが、家族の助けもあり、今は無事に話せるようになりました。日本に行くという夢を語る息子のためにも、頑張ろうと改めて思いました。
Q. 今後の夢や、挑戦したいことはありますか?
日本で博士号を取得し、いずれはインドネシアに自分の介護施設を作りたいです。これは、日本で介護を学んだからこそ生まれた夢です。インドネシアでは、高齢になったら寂しい思いをする人が多いのが現状です。いつか、利用者さんが生きがいを見つけて、心穏やかに過ごせるような場所を作りたいと思っています。そして、そこを看護や介護を学ぶ学生の実習施設にして、日本の優れた介護技術を後輩たちに教えていきたいです。
Q. 最後に、これから日本で学ぶ後輩たちにメッセージをお願いします。
日本での経験は、皆さんの将来にとって大きな財産になります。私自身、今でもYouTubeで日本の新しい介護技術を学んでいます。日本での学びを活かし、ぜひ皆さんの国で社会に貢献してほしいと思います。